新書の窓 文藝春秋 掲載記事

「性」をこじらせて

『天下統一』『「ストーカー」は何を考えているか』『中小企業の底力』『中東から世界が見える』『男子の貞操』

 天下人となった信長、秀吉。では彼らが果たした「革命」とは何か。藤田達生『天下統一』(中公新書)によれば、もとは在地勢力だった武士を土地から切り離し、天下人(信長)の一下僚にしてしまうことだった。検地による石高確定は知行の交換を可能にする「所領のデジタル化」であり、米が重視された背景には、中南米産銀の流入による明の貨幣混乱があったという説明も興味深い。京都追放後の足利義昭の再評価なども、教科書的な戦国時代像を一新する迫力あり。

小早川明子『「ストーカー」は何を考えているか』(新潮新書)は、五百人ものストーキング加害者と向き合い、相談されていた被害者が殺害されるという過酷な体験もした著者が、ストーカー心理、その対策方法を論じ尽くす。〈男性ストーカーが女性のプライベートな空間を攻撃することが多いのに対して、女性ストーカーは男性の公的な場面を狙う〉〈騙されることに常に怯えている彼(彼女)ら[ストーカー]が本当に欲しい回答は、「あなたを信頼して、自分は本心を言っている」というメッセージであり、言い訳でもなければ、ご機嫌とりでもありません〉など、洞察に富んだ観察、分析の数々は、対人コミュニケーションの在り方にも示唆を与えるだろう。

 雇用の約七割、企業数の九九%を占める中小企業。ともすればネガティブなイメージがつきまとうが、中沢孝夫『中小企業の底力』(ちくま新書)は、鳥取砂丘、アラブの砂漠などの砂を探求、五十ミクロンという極小かつ均等な砂で鋳物の型を作り上げ、精度を飛躍的に向上させた社や、不況により仕事のなくなった社内で、全工程の見直しなどに全員で着手、V字回復を果たした社など、日本の未来に希望を与えるエピソードを多数紹介。

酒井啓子『中東から世界が見える』(岩波ジュニア新書)は、現代アラブの若者に割かれた章が興味深い。独立闘争も中東戦争も遠い昔、目に映るのはイスラエルや米国に軍事的に圧迫される自国の姿。自信を喪失し鬱屈した若者がテロに導かれる様子が描き出される。欧米と対峙しつつ近代国家を樹立すべく苦闘するアラブ諸国。我が国の歴史と重ね合わせると、中東の見え方が変わってくる。

 自慰、恋愛、初体験、夫婦生活は、個人任せにするのではなく、その方法やマナーを教える「学校」が必要――。そう力説するのが坂爪真吾『男子の貞操』(ちくま新書)。恋人を作るには「モテ」という曖昧な基準を捨てよ。ヌードデッサン会に参加すると、AVやグラビアに登場する女性が、平均的な女性といかにかけ離れているかが分かる。「挿入→射精」でセックスの成功不成功を判断するな。“草食男子向け過保護マニュアル”と侮るなかれ。思春期から老年にわたる男女すべてに響く提言に満ちている。(胡)

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2014年7月号
2014年7月号
隠蔽された年金破綻
2014年6月10日 発売 / 定価880円(税込)
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