鼎談書評 文藝春秋 掲載記事

若き直木賞作家が女性心理を赤裸々にあぶり出す!

『スペードの3』 (朝井リョウ 著)

講談社 1500円+税

酒井 『何者』で直木賞を受賞した朝井リョウが、初めて社会人を主人公として描いた小説です。第1章の主人公・美知代は、大手化粧品会社の関連会社に勤め、発送の事務をしている。独身で、仕事にもたいした張り合いを感じていない彼女にとって、ミュージカル女優・つかさのファンクラブ「ファミリア」の仕切り役であることが生き甲斐。そんなある日、小学校時代の同級生がファミリアに加入する。美人で天真爛漫な彼女は瞬く間に注目を集め、美知代らが課した会の制約にも異を唱えるようになって……。第2章は美知代と同じクラスだったむつ美、第3章は人気も出演も減少気味のつかさを主人公に、登場人物を違った視点から眺めるように物語は編まれています。

 全編が女性目線で、心理も非常に細かく描かれている。今までこうした小説は女性が書いて、男性は女性の考えを知ってぞっとするものでしたが、男性が、しかも24歳の若い作家が書いたことに驚きました。こういう作品を書く男性と交際する女性は大変だな、と……(笑)。

山内 つかさとファミリアのモデルは、宝塚歌劇団なのでしょうが、私はその観劇に行ったことはないのです。先日、劇場の前を通りかかったときに、まさにこの描かれているとおりにファンの一団がダッと動いて、前列はしゃがみ、真ん中は中腰、後列は立つという即席の雛壇を作っていた。それは見事でしたが、この小説での描き方も私にとっては非常に新鮮でした。

片山 母親が宝塚ファンで、私も昔から観ている方ではあるんですが、劇場に行くと、老若男女ではなくて老若の女性ばかり。皆さんの目に星とハートが入っている(笑)。凄いですよ。

酒井 宝塚ファンの女性は、自分の理想が現実の男性ではかなえられないので、宝塚に理想とする世界を見出しているのだと思います。そういう男を排除した女の世界という感じもよく描かれている。女性に比べて男性の存在感が非常に希薄なのもそのためでしょう。

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この記事の掲載号

2014年7月号
2014年7月号
隠蔽された年金破綻
2014年6月10日 発売 / 定価880円(税込)
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