文藝春秋SPECIAL
ビジネスに効く! 世界の宗教Q&A

欧州危機を読み解く
プロテスタント vs. カトリック

かつて苛烈な宗教戦争を繰り広げた二大宗派はいかなる行動様式を持っているのか

浜 矩子 (エコノミスト) プロフィール

はま のりこ/1952年生まれ。一橋大学経済学部卒業。三菱総合研究所を経て、現在、同志社大学大学院ビジネス研究科教授。『グローバル恐慌』(岩波新書)、『「通貨」を知れば世界が読める』(PHPビジネス新書)、『新・国富論』(文春新書)など著書多数。

 欧州の亀裂が深まっています。財政危機をめぐって国内が混乱しているギリシャに「財政再建かユーロ圏脱退か」と強硬に迫るドイツの態度は、筋は通っていても、違和感を覚えた人もいるでしょう。

 今でこそ統合を果たした欧州ですが、一枚岩ではありません。多数の言語が話され、王を戴(いただ)く国もあれば、共和国もある。日本から見れば、キリスト教圏と一括(くく)りにしたくなりますが、カトリックとプロテスタントの二大宗派があり、東方に目を転じれば、東方正教会があり、イギリスには国教会もある。通貨こそユーロに統一されましたが、英国は頑(かたく)なにポンドを使っています。複雑怪奇な欧州を理解するための第一歩として、カトリックとプロテスタントの考え方や行動様式の違いを通して、現在の欧州を眺めてみましょう。

宗教改革で袂を分かった

 キリスト教の根底には、「人類の歴史は神による救済史である」という認識があります。

 二〇〇〇年以上前、ローマ帝国の支配下にあったユダヤに生まれたイエス・キリストは、形式的な律法を重んじるユダヤ教を批判し「律法に背いた人ですら救われる」と説きました。そのためユダヤ教の指導者から批判されて捕えられ、ローマ帝国総督の命令で磔刑(たっけい)に処せられますが、三日目に復活し昇天しました。しかし、いつの日か必ず「神の子」イエスが再び復活し、神は今までこの世に生を受けた全人類に「最後の審判」を下し、神が救済すると判断した者だけが天国に行ける。そのようにキリスト教徒は信じています。

 イエスの死後、その教えは復活したイエスに「出合った」パウロによって、ローマ帝国で広められ、信者を増やしていきました。弾圧や迫害も受けましたが、三一三年にミラノ勅令によって公認され、三九二年には国教とされました。しかし、三九五年にローマ帝国が東西分裂すると、教会も東のコンスタンティノープルと西のローマに分かれました。これが現在の「東方正教会」と「カトリック」の源流です。

 東ローマ帝国(ビザンツ)では皇帝が教皇の上に立ちましたが、西ローマ帝国は四七六年に滅亡してしまったため、ローマ教会はローマ帝国に侵入したゲルマン民族に積極的に布教を進め、王や封建領主などの世俗の権力を越える権威と権力を持っていきました。教皇を頂点にした厳格なヒエラルキーを形成し、十二使徒の後継者であるローマ教会を通して救済が実現される、と説きました。西欧の精神も社会もローマ教会すなわち「カトリック」によって育まれたといっていいでしょう。西欧がその影響下から脱していくのは、一四世紀に始まるルネサンスや次にお話しする一六世紀に本格的に始まる宗教改革以降のことになります。

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