文藝春秋SPECIAL
世界史のなかの戦国時代

【異常気象】小氷河期が戦乱を生んだ

常態化した飢饉が争乱を引き起こし新しい秩序への希求を生み出した

田家 康 (日本気象予報士会東京支部長) プロフィール

たんげ やすし/日本気象予報士会東京支部長
1959年神奈川県生まれ。1981年、横浜国立大学経済学部卒業。農林中央金庫、農林漁業信用基金を経て、現職。著書に『世界史を変えた異常気象』『気候で読み解く日本の歴史』(以上、日本経済新聞出版社)がある。

 日本の歴史を振り返った時、おおよそ一四世紀半ばから一六世紀半ばまで続いた室町時代ほど前期と後期で社会が変容した時代はないだろう。もちろん、平安時代、鎌倉時代、江戸時代においても、安定した政治形態が揺らぎ、やがて新しい枠組みに代わるという歴史の流れは同じだ。しかし、室町時代の場合、落差があまりに大きい。

「日本国王」を名乗った三代将軍足利義満の治世が始まる一三六八年から関東ならびに九州の不満分子を抑えて中央集権体制を維持した六代将軍足利義教(よしのり)が没する一四四一年までの前期約一〇〇年は繁栄期といえる。日明貿易によって中国文化が持ち込まれ、伝統文化と融合して北山文化が生まれた。能、狂言はこの時代に登場している。禅宗の発展もこの時期だ。為政者が住む京都ばかりではない。鎌倉時代まで、中世荘園の中の家屋敷は、田園地帯でまばらに点在していた。室町時代に入ってから畿内だけでなく関東でも家屋敷が集まるようになり、村落結合といって小さな散村がまとまり、自立した惣村・郷村へと変貌していった。そこでは、入会地(いりあいち)の山林や灌漑(かんがい)設備を共同で保有・管理し、年貢をとりまとめる地下請(じげうけ)の責任を持ち、秩序維持について独自の村法(惣掟/そうおきて)による自検断(じけんだん)を行使した。

 ところが一四六七年の応仁の乱以降の室町時代後期、すなわち戦国時代に突入すると、将軍の地位が失墜し、日本の実質的な統治者がいなくなる事態となってしまった。戦乱の中で人々が生きのびるため、自力救済が行動原理となった。また、独立自衛を行う惣村の中には、周囲を濠(ほり)で囲む環濠(かんごう)集落の形成もみられた。

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