文藝春秋SPECIAL
【中国 滅亡への法則】どんな悩みを抱えているのか?

社会調査でここまでわかった
中国最新結婚事情

親の干渉、増える離婚率、期待する生活水準の高まり……。結婚から見えてくる中国人の悩み

園田 茂人 (東京大学教授) プロフィール

そのだ しげと/1961年秋田県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程中退。著書に『中国人の心理と行動』(NHKブックス)、『不平等国家 中国』(中公新書)、『チャイナ・リスクといかに向きあうか』(共編、東京大学出版会)など。

 中国の社会現象を眺めていると、時々、既視感と違和感を同時に味わうことがある。

 先日も、天津の街中を歩いていると、公園で、五〇代の私と同年輩の女性たちが、プラカードのようなものを持って集まっている光景に出くわした。

 何かの抗議活動かと思いきや、何と、子供のお嫁さん・お婿さん探しの一群。年齢や身長、学歴、職業、性格など、子供の状況と相手に求める条件を提示したカードを持ち、関心をもつ人と直接「商談」している。中には業者らしき者も混じっていたが、親が子供の結婚にこれほどまでに関与しているのに、正直、戸惑った。ところがその背後に、結婚年齢が上昇し未婚者が増えているといった、どこかの国と似た切迫した現実がある。

家が買えなければ結婚できない

 中国の若者は、そもそも相手にどんな条件を求めているのか?

 二〇一四年に七万人強の一般市民を対象にしたオンライン調査(以下「調査1」と略す)によると、配偶者選択の際に重視する三大条件は、男性が外見、健康、性格、女性が経済条件、健康、職業だったという(「二〇一四中国人婚恋状況調査報告」『新京報』二〇一五年一月一二日付)。同種の調査が二〇一五年に湖南省でも行われているが、結果はほぼ同じ。女性の経済重視が目立つ結果となっている。一昔前の中国で、「階級成分(社会主義革命前に属していた階級)」が重要な結婚の条件となっていたのとは、大きな違いである。

 農村出身者に限定すると、これにもう一つ、別の条件が加わる。

 二〇一一年に、二〇歳から三一歳の、農村戸籍をもちながら都市で働く若者二五一七名を対象にした質問票調査(以下「調査2」と略す)によると、配偶者選択の際に重視する項目として二番目に挙げられていたのが「年長者を敬うこと」。伝統的な人間関係を重視する農村で育ったこともあって、結婚した後に親の面倒をみることが強く期待されているからである。

 一九八〇年代以降に都市で生まれた一人っ子たちも、親との関係を無視して配偶者選択を行うことはむずかしい。調査1では、調査対象者の三割以上が、「親の干渉によって、恋愛がうまく進まなかった経験がある」と回答しており、男性の方でその割合が高かったというから、その状況は推して知るべしだろう。調査2の結果によると、都市の農村出身者で既婚者のうち、親の紹介で相手と知り合ったカップルは全体の五分の一程度に達しているから、配偶者選択に親が関与しているケースは少なくない。かくして、配偶者選択は困難を極めることになる。選択にあたって、当人ばかりか、親の期待も入り込むからだ。

 調査2によれば、都市で働く農村出身者の若者が結婚できない理由として最も大きな理由は、男女ともに「男性の収入が少なくて結婚できない」というもの(図1参照)。女性が結婚条件として最も重視する経済条件を男性が満たすことができない、というわけだ。

 結婚に当たっては、男性側の家が新婚夫婦用の新居を準備するのが一般的。男性は新しい部屋を用意できなければ、結婚もままならないのである。

【次ページ】大都市では三割が離婚

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