赤坂太郎 文藝春秋 掲載記事

小沢に切り崩された「七奉行」

検察との戦いで酒量の増えた小沢。起死回生の切り札はあるのか

 一月十六日、東京都千代田区の日比谷公会堂。民主党大会が行われた当地は、幹事長・小沢一郎の元秘書である衆院議員・石川知裕が政治資金規正法違反の疑いで逮捕された前夜の衝撃を引きずり、異様な空気に包まれていた。

 周囲を警官が囲み、その外で保守系の市民団体や右翼団体が大音量で抗議行動をしている。日比谷公会堂は一九六〇年、社会党委員長・浅沼稲次郎が右翼青年に刺殺された場所である。厳戒の中、会場入りする小沢の姿を見て、五十年前の悲劇を連想する議員さえいた。

 小沢は午後一時少し前に会場に到着。控室で待機中の連合会長・古賀伸明や各党代表らを前に問わず語りに「大会で、はっきり話します」と口にした。来賓らは声を掛けづらいほどの迫力を小沢に感じたが、新党大地代表・鈴木宗男は小沢に近寄り「石川君の弁護士は『彼は報道されているようなことは一切喋っていない』と言っています」と耳打ちした。

「党大会の日にあわせたかのように逮捕が行われた。こんなやり方がまかり通るなら、日本の民主主義は暗澹たるものになる。毅然として戦っていく決意だ」

 小沢はそう挨拶した。実は、この二時間前、報道陣を閉め出して開かれた地方代議員会議でも、小沢は、ほぼ一言一句違わぬ挨拶をしていた。

 朝、首相公邸に乗り込み、首相・鳩山由紀夫から「信じています。(検察と)戦ってください」という言質を取り付け、その後に地方代議員に決意表明。最後に党大会でマスコミを前に既定事実として続投を宣言する――。批判を封殺するために計算し尽くされた小沢シナリオに沿い日程は進んだ。同日夕、党のホームページに党大会のニュースがアップされたが、末尾には「(小沢の)挨拶は万雷の拍手で確認された」と記された。

 党大会では、もう一つ沸いた場面があった。昨年の衆院選で、全小選挙区で勝利した八県連を表彰した時だ。祝儀袋には現金で三百万円も入っていた。袋の「厚さ」に会場からどよめきが起きた。政治とカネが問題になっている時、公衆の面前で高額の現金を配るのはどうかという意見もあったが、小沢は譲らなかったという。選挙にはカネがかかる。効果的な所には徹底的に注ぎ込む。いかにも小沢の発想らしい演出だった。

 この日以来、民主党は、小沢の続投を支持し、検察と対決する道を突き進んでいく。この路線は、幹事長職務代行・輿石東、国対筆頭副委員長・松木謙公ら小沢側近が推し進めた。

 十八日、党内に「捜査情報漏洩問題対策チーム」が発足。同日には「石川代議士の逮捕を考える会」も開かれた。講師は元検事の郷原信郎。今や検察批判の急先鋒となった郷原が「石川議員の無念は察するにあまりあるし、意志を踏みにじられた有権者の気持ちを思うと納得いかない」と述べると、出席議員からは「不当逮捕だ」の声が飛び、石川の釈放要求発議を検討すべきだという意見も出た。

 同じ頃、石川の兄貴分を自任する松木は、石川らが拘置される東京都葛飾区小菅の東京拘置所を訪ねている。面会はできなかったが、タオルやティッシュなどを差し入れた。タオルは「潔白」を意味する白。政治家が拘置所を訪れることはイメージダウンにつながるが、それを承知で訪ねたのは、党をあげて小沢や石川を守り立てようという思いの表れだ。

【次ページ】 水面下での神経戦

この記事の掲載号

2010年3月特別号
2010年3月特別号
芥川賞発表/わが第三極宣言 渡辺善美
2010年2月10日 発売 / 特別定価800円(税込)
政治・経済の新着記事 一覧を見る RSS

登録はこちら

文藝春秋について 毎月10日発売 定価880円(税込)

※発売日・価格は変更の場合があります。