特集 文藝春秋 掲載記事

福山雅治 「龍馬」を語る

大河ドラマに挑んで一年、“龍馬さん”のイメージを覆したかった

 今月最終回を迎える大河ドラマ「龍馬伝」で主役を演じる福山雅治が語る、演じたかった“龍馬さん”と、この1年で得た大きなもの――。
「文藝春秋」12月号掲載の記事から、一部を抜粋しました。ぜひお読みください。

 今から2年前、坂本龍馬を演じることが決まってから、僕は龍馬さんを先輩のように感じてきました。彼が亡くなったのは1867年、今から143年前です。僕は今41歳なので、龍馬さんが生きていた時代から100年ほどで生まれてきたことになります。

「龍馬伝」で、龍馬さんのすべてを描き切れたかと言われたら、正直に言って、それはやはり無理だったと答えざるを得ません。知れば知るほど、そして演じれば演じるほど、龍馬さんという人物の大きさが分かってくるからです。坂本龍馬の人生が未完成のまま終わってしまったため、どうしてもわからないことも多く残されています。

 それでも今回、「龍馬伝」で龍馬さんを演じることができて、本当によかったと感じています。龍馬さんを演じながら、僕自身がいろいろなことを吸収することができました。40歳を過ぎてなお、多くの発見と出会えたことに、自分が一番驚いています。

 龍馬さんを演じたことの本当の意味に気がつくのは、5年後、10年後になるのではないでしょうか。これからの人生で幾度も、「そういえばあの時、龍馬さんは……」と思い出す瞬間が訪れるだろうと漠然と想像しています。今は、こんな素晴らしい機会を与えてもらったことに、ただ素直に感謝するばかりです。

 最初に坂本龍馬役の話をいただいたときは、実は、かなり悩みました。多くの日本人に愛されている坂本龍馬という人物を、果たして自分が演じきることができるのか……。既存のイメージとは違うものになってしまい、見ている人に違和感を与えるのではないかと大きなプレッシャーもありました。それでも最終的に決断できたのは、NHKの制作スタッフから、「これまでにない新しい龍馬像を一緒に作りましょう」という言葉をもらったからです。それを聞いて、僕も「よし、やってみよう」と腹を括りました。

「龍馬伝」を見て、「そんなのは坂本龍馬じゃない」と、多くの反発がくることは最初から予想していました。でもそれは、誰がやっても同じことなのではないでしょうか。視聴者が100人いれば、100通りの坂本龍馬があると思います。だからこそ僕はこのドラマを通して、新しい龍馬像を作ることにチャレンジしてみようと決めたのです。スタッフとも、1年を通して「龍馬とは何だったのだろう」とずっと考え続けてきました。

 撮影が始まる前に、自分なりの役作りをすることはあえて避けました。特に、日本人の龍馬観を決定的にしたであろう数々の小説や資料は、ざっと斜め読みする程度にとどめました。これからみんなで新しい龍馬さんを作りあげていこうという時に、僕自身がなるべく固定観念に捉われないようにしたかったのです。

 撮影が始まった頃は、自分でもまだまだ違和感がありました。時代劇に対する戸惑いもあり、和装も着慣れていなかった。スタッフも僕も、龍馬さんという役柄に対して手探りだったので、完成した映像を見ても、「ここは違う。何か足りない」と、しっくりこないことが多かった。

 変わってきたのは、放送でいうと4〜5回目くらいでしょうか。少しずつ時間が経ち、龍馬さんの人格が徐々に自分の中に形成されるような感覚になってきました。すると土佐弁もだいぶ流暢になり、セリフもすんなりと覚えられるようになる。それまでイメージでしかなかった「新しい龍馬」が、だんだんカタチとして見え始めてきたのです。

 制作スタッフと出演者との区別もなく、大河に携わっている全員で、ひとつの「龍馬」を作るために進んでいるという雰囲気に満ちていました。そして舞台は幕末でも、今の日本の空気感を取り入れてドラマを作ろうとも考えていました。

    ◇

(記事より一部抜粋。文藝春秋2010年12月号では、坂本龍馬と自分との共通点や大河ドラマ出演にいたるまでの葛藤、ファンへ届けたいメッセージなど、9ページにわたってたっぷりと載っています。また巻頭のグラビア「日本の顔」には、さまざまな表情を切り取った写真も数多く掲載しています。あわせてお楽しみください)

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福山 雅治

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2010年12月号
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