著者は語る 文藝春秋 掲載記事

連載時から反響を呼び、
最終回は掲載雑誌の巻頭を飾った人気小説

『ロスジェネの逆襲』 (池井戸潤 著)

佐久間 文子 プロフィール

さくま あやこ/1964年、大阪府生まれ。1986年、朝日新聞社に入社。文化部、「AERA」、「週刊朝日」などで主に文芸や出版についての記事を執筆。2009年から2011年まで書評欄の編集長を務める。2011年に退社し、フリーライターとなる。

ダイヤモンド社 1575円(税込)

「週刊ダイヤモンド」連載の『ロスジェネの逆襲』最終回は同誌の巻頭に掲載された。読者調査で一位になったら、という約束が編集長とのあいだにあったためだが、連載小説が巻頭に載るのは雑誌としても初めてだったという。

『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』に続く三作目。『空飛ぶタイヤ』『下町ロケット』など大小さまざまな企業が舞台の人間ドラマでこれまでの経済小説と違う層へも読者を広げてきた池井戸さんの、唯一のシリーズものだ。

「ほかの本のサイン会でも『半沢どうなってますか』という声がすごく多くて。こんなに待ってくれてるならと、予定を前倒しにして単行本を出しました」

 前二作で組織の論理に敢然と挑んできた銀行マン半沢直樹は今回、系列子会社の証券会社部長として登場する。前作の大暴れの余波で、銀行の花形部署から出向させられたという設定だ。

 時代は二〇〇四年。半沢の会社に、あるIT企業の買収計画が持ち込まれる。成功させれば大きなビジネスになるが、親会社の銀行が仕事を奪う。半沢は相手をあっと言わせる奇策を打ち立て、仁義なき戦いの火蓋が切って落とされる。

 半沢の信条、「やられたら倍返し」は健在ですね――そう言うと、「その言葉、一人歩きしてるんですけど、本当は『基本は性善説』という前段があるんですよ」と苦笑された。

「でも聖人君子の主人公ってつまらないし、手段を選ばず結構危ないこともやるから作者としても魅力がある。それと、半沢にはうそがないでしょ。正論吐く人間がいまや絶滅品種になっているから、あこがれる人も多いんじゃないかな」

 そんな半沢とタッグを組むのはのちに「ロスジェネ世代」と呼ばれる、就職氷河期を経験した子会社はえぬきの森山だ。

「ロスジェネの人たちがバブル世代を既得権益者と呼んで反感を持っているという話を聞いて。前の二作で半沢の敵は団塊世代だったけど、今回は半沢が下から突き上げられたりもします」

 世代論について、池井戸さんは「血液型と同じ」だという。「なんとなくうなずいてしまうけど、科学的には意味がない。バブル世代がみんな仕事ができないわけでもないし、ロスジェネが全員優秀ということもない。いつの時代も二世代ぐらい上の上司はうっとうしいんです」

 単なる世代間対立には落とし込まない。自分ならどう戦うかを考えさせる。

「バブル世代が今から逆襲しても残念ながら間に合わないので、三十代ぐらいの人がやるしかない。でないとオレたちがいずれ困る(笑)。そういう応援の思いを込めて書いたのが『ロスジェネの逆襲』です」

オレたちバブル入行組

池井戸潤・著
定価:690円(税込) 発売日:2007年12月10日

オレたち花のバブル組

池井戸潤・著
定価:690円(税込) 発売日:2010年12月03日

この記事の掲載号

2012年10月号
2012年10月号
「国会改革」憂国の決起宣言
2012年9月10日 発売 / 定価840円(税込)
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