赤坂太郎 文藝春秋 掲載記事

永田町に甦る“大乱世の梶山”流

安倍官邸を仕切る官房長官・菅義偉は「現代の梶山静六」になれるのか。

カット・所ゆきよし

 安倍内閣が発足して約3か月がたった3月23日。首相・安倍晋三は神奈川県茅ヶ崎市内の名門ゴルフ場、スリーハンドレッドクラブでプレーを楽しんだ。桜は満開、同行したのは経済産業省から安倍の下に駆けつけた政務秘書官・今井尚哉ら官庁出身の秘書官たち。日銀総裁人事は国会承認され、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加表明も片付いた。7月参院選までの大きな2つの課題をこなした安倍は「花がきれいで、気持ちよくやれた」とご満悦だった。

 ハネムーン期間の3か月を終えても、内閣支持率は高止まりし、景気も上向き。安倍に、今のところ死角は見当たらない。

 そんな春爛漫の中での安倍のゴルフは、政権が好調な3つの要因をくっきりと反映している。

 まず第一は「復活した」と胸を張る日米同盟関係。ゴルフを首相在任中もプレーするきっかけとなったのは米大統領、バラク・オバマなのだ。

 話は昨年末にさかのぼる。初めてオバマとの電話会談に臨もうとした安倍は、先方の都合でかなりの待ち時間ができた。手持ち無沙汰の間、ワシントン勤務の経験がある外交官たちは、オバマがいかにゴルフが好きか、いかに毎週のように首都ワシントン郊外のアンドリュース空軍基地内のゴルフ場でプレーしているかを安倍に伝えた。「へえ、そうなのか。じゃあ、俺もやろうかな」。乗り気になった安倍は年が明けると、ゴルフを再開した。「ゴルフ」は2月の首脳会談の隠し味にもなり、オバマが「今度一緒にラウンドしよう。ただし、ゴルフが上手いこの人は抜きで」と副大統領、ジョー・バイデンを指して大笑いになった記憶も新しい。

 そもそも、安倍が3月に満開の桜のもとプレーしたスリーハンドレッドクラブは祖父、元首相・岸信介が元大統領、ドワイト・アイゼンハワーとプレーしたバーニング・ツリー・ゴルフクラブにならったゴルフ場でもある。「強い日米同盟」は、ゴルフと強くリンクしているのだ。

 2つ目は、安倍が気のおけないプレー仲間として選んだのが今井たち官僚出身の秘書官であるということだ。

「オバマのゴルフ好き」を伝えた外務審議官・斎木昭隆、政務秘書官の今井、同じく安倍とラウンドした秘書官・柳瀬唯夫ら経産省組が、安倍に近い筆頭格の官僚たちだ。外務省と経産省はTPPの事前交渉でも連携し、秘密を外部に漏らさなかった。そこに政治家代表として加わる官房副長官・加藤勝信も旧大蔵省OB、官僚出身だ。「根回しはお前たちがしろ」と無理難題をふっかけた民主党政権とは異なり、役人の生態を熟知する加藤は自ら携帯電話とメールを駆使し、要所に根回しする。「昔のやり方、普通に戻った」と霞が関の官僚たちが安堵する所以だ。

 TPP問題も、政権に就いてからの斎木たちの粘り強い進言がモノをいった。「オバマと1月に会談できないと分かったときは残念だったけど、今にして思えば準備する時間がとれてよかった」と安倍は周辺に語り、外務省への感謝を隠さない。

 第1次内閣当時の安倍は、前任者の元首相・小泉純一郎の存在に引きずられ、「政治主導」と気負いすぎていた。だが、今度の比較対象は民主党政権。「普通」にやっているだけで、世間の評価は「よくやっている」となる。

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この記事の掲載号

2013年5月号
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